永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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赤いマニキュア

 マニキュアを塗った手を開いて乾かしていると、前の席の彼は黙って窓を開けた。

「ちょっと、寒いんだけど」
「臭いんだ。俺だって寒い」

 授業中に暑いと思って脱いだカーディガンを着ようとして、マニキュアが乾くまで着れないことに気付いた。

「…寒い…」

 手をパーにして腕を伸ばしたまま、机に額を付ける。冷たい。

「学校でしなきゃいい話」

 しゅっと衣擦れの音がする。ちくしょう。自分ばっかり上着着ちゃってー!
 文句を言ってやろうと顔を上げかけた瞬間、背中にふわりと何かがのった。じんわりと暖かい。これは…。

「寒そうだから貸してやる」
「…あ、ありがと」

 定本の上着。定本の匂いがする。なんて変態くさいかな。
 かぁっと頬が熱くなって、次第にその熱は耳にまで広がっていく。机に熱が移って、今や熱い。

「あのさ」
「ん」
「定本、寒くないの」
「寒くない」

 マニキュアが乾いたら、この暖かさはなくなってしまう。こんな、すぐに消えてしまう暖かさなんて。

「…定本さ、彼女作んないの」

 普通に言ったつもりなのに、口の中がからからに乾いて唾もうまく飲み込めない。
 どくん、どくん、机を伝って心臓の音が耳に届く。

「だって俺の好きな子、鈍いんだもん」
「すっ、好きな子いたの!?だめじゃん、あたしに上着貸したりしちゃ…!その好きな子に誤解されちゃったら…!」
「そう思われて、いいんだよ」
「意味、わかんな……ぃ…」

 あたしのことを好きだと思われていい。そんな条件、当てはまるのって…。
 途端に、忘れていたかのように聞こえなかった心臓の音が大きな音で、早く早くと焦るように鳴りだす。

「溶けちゃいたい」
「そりゃ困る」
「………ねぇ、告白って重要だと思う」
「じゃあ、付き合って」
「シチュエーションも、大事だと思う」
「めんどくせぇ女」

 定本は笑ってあたしの頭を撫でた。

「俺とお付き合いしてよ、三浦」

 耳元で定本のかすれた声が、少し震えた。

「うん」