永遠少年症候群

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novel

ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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  • 大正哀歌
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    ブクログのパブー……電子書籍形式。詩の投稿はこちらのみ。
    小説家になろう……ガラケー、スマホ対応。pdf形式の縦書き対応。

    アンチハッピーエンディング

     ハッピーエンドは嫌いだ。自分が惨めになるから。
     小さな頃の夢はお嫁さんになること。一つ年下の幼馴染みとの楽しい家庭を理由もなく夢見ていた。ずっと一緒にいて、一緒に大人になって、素敵な告白と素敵なプロポーズをしてもらって…って。
     そんな、今時少女漫画でもない平凡な憧れは小学生で打ち砕かれていた。男の子と女の子が二人だと何かしらからかわれるものだ。私も忍も、それを嫌がって一緒に遊ぶことはあまりなくなっていった。
     その代わりに私はどんどん忍を本当に好きになっていった。せっかくできた彼氏(手を繋ぐこともしなかった)は忍と比べてしまって、頑張って好きになろうとしたのに結局フラれるし。その時も慰めてくれて、どの男の子より忍は私のことをわかってた。それで、また忍の部屋に遊びにいくようになった。忍は中学で剣道部に入りたくましくなっていき、小学生で既に抜かされていた身長もぐんぐん引き離されていった。
     私が遊びに行くのも受け入れてくれているし、幼い頃夢見たハッピーエンドは近いと思ってた。高2の夏休み、引っ越すことになるまでは。
     数年来の恋は呆気なく打ち砕かれ、特に理由もないのに連絡などできない。ハッピーエンドは、信じれば信じるほど自分が惨めになっていく。だから、信じない。

    ***

    「信じるから叶うんじゃないかな」

     短大に進学して友達になった笑美はあっけらかんとして言った。

    「私は何事も信じたら世界が変わると思ってる」
    「だから、そう信じて裏切られたから…」
    「じゃあ、何でこの街に戻ってきたの?その忍くんに会えるって信じたからじゃないの?」
    「忍のことはすっぱり諦めたの」

     そりゃあ、可能性としてはばったり出会うこともあるかもしれないけど。
     街じゃなくて短大を選んだわけだし。

    「渉汰はけっこう納得してくれたのに」
    「笑美に付き合える彼氏さんってたぶん相当優しいよね」
    「なっ、何それ、どういうこと!?」
    「そのまんまの意味~」
    「ねぇ、本当に諦めたの?忍くんのこと」
    「忍も私のことなんて忘れてるよ」
    「そうかなぁ」

     そうだよ。ハッピーエンドは信じない。期待するだけ無駄なんだから。

    「とにかく、忍のことはもう終わり。私だっていい人がいれば彼氏ほしいよ」
    「それならさ、合コン行く?友達が幹事するんだけど人数が足りないんだって」
    「私いっつも合コン断ってるでしょ」
    「忍くんのことがあったから誘うのやめただけ。出会いの場を避けてて出会いがないなんて言うの、変だよ」
    「そりゃそうだけど…」
    「相手は華宮大学のフットサルサークルの人達だよ。男の子側の幹事も友達だからきっといい人集めてくれるはず!はい、決まりね」

     こうなったら笑美を止めることができるのは彼氏さんだけ。さっさとどこかに連絡して日時や場所の詳細が書かれたメールを送ってきた。
     なるようになる、かなぁ。

    ***

     短大の正門前にいる気合いの入りまくった3人。私とはかなりタイプが違うけれど、合コンのメンバーなのであろうことは察しがついた。

    「あの…」
    「あ、山代さんね?鴨川から聞いてるよ。よろしく」
    「よろしく」
    「さて、これから男の子達と合流するんだけど一つお願いがあるの。男の子の幹事、私が狙ってるから他の人にしてね」
    「あ、うん」

     そこからだらだらと移動して男の子と合流することになった。私の他は同じ学科らしく、話を聞く側に回っていた。
     初合コンはややこしいことになってしまった。男の子側の幹事は群を抜いてイケメンだった。私は目の色を変えた女子二人をしっかりと見てしまった。幹事の子のお願いは忘れ去られた瞬間だ。
     そしてもう一つ。そのイケメンは、私の元カレだった。3人が篠崎くんに必死にアピールする中、あろうことか彼は私に逃げてくる。

    「女子って怖い」
    「そうだね」

     中学でも同じこと言ってたなぁ。確か私がボーイッシュだからよかったのではないかと友達は分析してた。
     でも私はたぶん篠崎くんよりも恐怖を感じている。篠崎くんには陰湿な嫌がらせはないだろうし。篠崎くんはそんな女が嫌いとでも言っておけばいいかなぁ。

    「ごめん、山代。誰か狙ってる?」
    「ううん」
    「帰ろうか」
    「…いいの?」
    「いいのいいの。あ、大丈夫?」

     篠崎くんが突然大きな声を出した。

    「珠美ちゃん、体調悪そうだね。オレ、珠美ちゃん送るから。飯野、幹事よろしくな」
    「俺っすか!?」

     篠崎くんにそっと背中を押されて、いろいろ引き止められたのを無視して、二人で店を出た。

    「改めて久しぶりだね、山代」
    「笑美の友達って、篠崎くんだったんだね」
    「高校の同級生で。飲み直さない?近くに後輩がバイトしてるバーがあるから」
    「うん。篠崎くん、彼女いないんだね?」
    「いないよ。山代は?忍くんはどうなったの?」
    「…こっちに帰ってきたけど、会えなくて」
    「まだ好き?」
    「…諦めた…っていうか、諦めるつもり」
    「そうなんだ」

     誰にも…こんなに素敵な篠崎くんにさえもときめかないあたり、全然諦めきれてない。
     篠崎くんについて行ってお店に入る。と、すぐに耳障りのいい声がした。

    「お、篠崎サン。合コンはどうだったんすか?」
    「なんか怖かったから逃げてきた。ついでに元カノも救出、みたいな」
    「元カノ?」
    「ど、ども……っ、あ」

     顔をあげて絶句した。

    「忍…!?」
    「た…、…え?」
    「横溝、オレ疲れちゃったから山代送ってくれ。な?じゃあ、またな」
    「あ…はい。あの…あと20分くらいでバイト終わるから…」
    「…うん」

     会いたくて会いたくて、でもなんだかんだと理由をつけて避けてきたのに、会ってみるとあっさりしたものだった。

    「何か飲む?」
    「…ウーロンハイ」
    「合コン、俺の友達ばっかりだったんだけど逃げてきて正解」

     忍は大人びた様子でクスクス笑った。私が知らない3年に何かあったのかもしれない。

    「忍、私が引っ越して…彼女とか、できた?」
    「まさか。好きな子くらいはいたけどね…珠美姉ちゃんと違っておしとやかで、髪とかふわふわで長くて」
    「なんか…デートもできなかったんだなぁってよくわかった」
    「期待した反応と違う…。そっちは?」
    「全然。私、ずっと忍が好きだったから」

     ハッピーエンドは…何もかも与えてもらうようなハッピーエンドは、いらない。
     これで砕けても、別にいい。

    「……からかわないで」
    「からかってない」
    「…ちょっと待って。着替えてくる」

     忍を待つ間に会計を済ませてしまおうと思ってレジに向かうと、忍はすぐにやってきた。

    「帰ろ」
    「…うん」

     並んで歩くなんて、何年ぶりだろう。律儀に守り続けた距離感はまったく変わってない。

    「今は?」
    「ん?」
    「好きだったって言ってたけど、今は?」
    「今は…3年も忍の近くにいなかったから、わからない」
    「じゃあ、付き合ってみる?」

     忍が立ち止まって私を見下ろす。あ…これ、小さい頃に思い描いた場面だ。
     ずいぶん遠回りしたなぁ。

    「よろしくお願いします」

     与えられるハッピーエンドは嫌いなの。私は、これから最高の幸せを作っていく。

    2013/10/31公開