永遠少年症候群

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    ブクログのパブー……電子書籍形式。詩の投稿はこちらのみ。
    小説家になろう……ガラケー、スマホ対応。pdf形式の縦書き対応。

    日曜の朝

     言葉は、なかった。ただ、僕が彼女を好きで、彼女もきっと僕を嫌いではない。ただそれだけでよかった。
     雨の降る朝、気怠い空気の中で、トーストを焼いてる間に顔を洗う。

    「うー…朝?寝ちゃったか…」

     彼女ももぞもぞと起き出してきて、少しずつ増えている彼女専用の洗顔剤で顔を洗う。
     まだ少し、昨日の酒が残っていた。

    「…私達の関係って、さ…」

     彼女が、ぽつりと呟くように言う。
     脱ぎ散らかした服を拾い上げて洗濯機に投げ込んで、マグカップに牛乳を注いでレンジに並べる。
     トーストとホットミルクがほぼ同時に出来上がり、彼女に勧めると彼女はすとんとテーブルを挟んだ向かいに座った。ホットパンツから伸びる白い生足は、きっと触れたらすべすべするんだろうなぁ。そんな、余計なことを思いながらトーストを頬張ると、彼女はわずかに眉間に皺を寄せて深刻そうな顔をした。

    「…何なんだろ」
    「ん?」
    「だから、私達の関係」
    「恋人以外に、何があるの」

     弾かれたように彼女が顔を上げる。
     それ以外の答えはいらないだろうに、わざと驚いた顔をしているように見えた。

    「そうよね。私、あなたの彼女でいいのよね」

     呼び方が変わるだけ。でも、そう思っているのはきっと僕だけだ。
     彼女は奇妙な笑みを浮かべた。彼女でない彼女のときには、見たことのない笑顔。

    「じゃあ、ねぇ、キスをして」

     それはお願いのようで、命令でもあった。
     拒否をする理由もないので、言われるままにイチゴジャム味のキスをした。

    「そっか、恋人、か」

     ぽつりと言って、彼女はくすくすと笑った。その呼び方は、本当は好きじゃない。
     僕と彼女の好きなものは、ほとんど同じだった。だけど恋人になった途端、好き嫌いが分かれるものにぶつかった。
     そのことを僕は、とても残念に思う。

    「私はあなたの恋人よ」

     恋人という名前の関係になって、一つ嫌いなものが増えた。この、彼女の口癖だった。ワタシハアナタノコイビトヨ。
     僕を束縛することが、恋人の権利だという。どこで何をしているのか報告することが、恋人の義務だという。権利とは。義務とは。
     わからないよ、と言った。
     なぜこうなったのかわからない。
     ただ、僕の答えは一つだ。

    「別れよう」

     彼女は泣いて嫌がったけれど、それすらも「恋人の義務」とやらなのではないだろうか。きっと僕達は恋人でないときの恋人の方が、とても素敵な恋人同士でいられた。

    宇多田ヒカルの日曜の朝を聞きながら、そのイメージをかきました。…とはいえ、今回は歌詞のイメージが9割ですが。
    この掌編小説は、著作権を放棄します。

    2013/10/29公開