永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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ショートショートショート

落ちる音

 水の落ちる音が好きだ。ぱた、ぱた、とフローリングに丸い水滴が落ちる音。
 コップを倒すのでは勢いがありすぎる。君が髪の毛をきちんと乾かさずに落ちる音も、少し多すぎる。君はもう少しちゃんと髪を乾かした方がいいと思うな。
 いつの頃からか、ぱた、ぱた、とベランダに雨が伝い落ちる音を聞くと、少し甘酸っぱい気分になる。

「あ、雨だ。キミ、雨の日が好きだよね」
「雨の日が好きというわけでは――……」

 彼女がカーテンを細く開ける。雨雲を通しても明るい光が、彼女の髪の毛を茶色く見せる。
 ぼんやりと光るような、芸術的な曲線を描く顔の輪郭を見て、美しいなと思う。
 あぁ。そうだ。
 その大きな目からこぼれた涙が頬を伝い、床にぱたりと落ちた音を聞いたことがある。
 それが僕の、恋に落ちた音だったのだ。

盗む人

 あの人は警察のくせに泥棒なんです。まあ、使い古された陳腐な言葉ですが、心を盗まれたのです。

「また来ました、お巡りさん」
「あっ!」

 女ですもの。追いかけるより追いかけられたい。あなたとの追いかけっこは、いつも刺激的で退屈しません。

「今日こそ逮捕してやるから、下りてこい!」
「もっと優しく言ってくださいな」
「茶化すのもいい加減にしろ! いつもいつももう少しってとこで逃げられて、始末書ばっかりなんだ!」
「お仕事を辞めたら? 私が養ってあげるのに」
「泥棒稼業で、か? ふざけるなよ」
「泥棒じゃなくて怪盗です。でも、まだ一番ほしいものは盗めてないのよね」

 それは、使い古された陳腐な言葉ですが、あなたの心なのです。

楽園

 自転車を坂の下に倒し、灯台の少し急な階段を駆け上がる。走らないでくださいという張り紙を横目に。
 人が一人通るのがやっとのテラスのような階に出ると、視界の端から端まで全て深い青色が目に飛び込んでくる。果てしないという言葉がぴったりの場所だ。
 沖の方では薄く雲がかかっていて、水平線が濃い青となってはっきりとうつる。快晴の日の方が空と海が混ざってしまうのだ。
 どこまでも青い海を目を皿にしてじっと見渡す。と、白い点が大きく揺れた。

「いた!」

 お兄ちゃん。頼りない白い小舟で大海原へ漕ぎ出たお兄ちゃん。水平線の先にある楽園へ行くのだと言って、行ってしまった。帰ってきたらきっとたくさんの冒険の話をしてくれることだろう。
 噂に聞く楽園は、水平線の先にあって、極彩色の花や鳥が色を添え、海でその日の食料さえ獲れば、あとは甘い果実をかじりながらのんびりお昼寝までできる。夜は音楽にのって踊り、昼は好きなだけ遊ぶ。そんな場所。お兄ちゃんは、そんな場所を目指して行ってしまった。

「気を付けて……」

 風が祈りを届けてくれますように。
 灯台が建つ丘を下ると、小さな森には赤い果実が実っている。今日のおやつはこれだ。ふわふわのケーキだとか、甘い蜜がかかったドーナツとか、そういうものがここにはない。
 昔海に流れ着いたものをお父さんが修理してくれたボロボロの自転車にまたがって、家に帰る。途中、隣のおじさんが流木と流れ着いた釣り糸で作ったウクレレを陽気にかき鳴らしている。まったく、プライバシーも何もない。
 人々は明るく楽観的だ。みんなお兄ちゃんを明るく見送った。誰も口にしなかったけど、たぶん、楽園なんて、ない。
 私も早く、こんな何もない島を出たいものだ。

 高校生の頃に書いてたような雰囲気だけのもの。ここから何か広がるかもしれない。