永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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    恋の迷路に落とし穴

     どうしてこうなったのかは全く、きっと誰にもわからないのですが、ただ一つ言えるのは、これは恋ではないということです。
     見た目は清楚にまとめあげ、言葉遣いも上品で、ただ中身だけが最低。そんな私にとって「付き合う」というのはゲーム感覚で、夏祭りの的屋の射的ゲームのようなものでありました。ターゲットを決めて、落として見せるわけです。
     ですから、私は昨年の夏も、射的ゲームの的を、今までにいなかったタイプの、恋愛をしたことがないという一人の男性に決めました。
     百戦百勝百戦錬磨の私にとって、女に触れたことのない彼を恋に落とすことなど赤子の手をひねるようなもの、であるはずでした。

    ***

    「……おかしい」

     スマホの画面をにらみつけることになろうとは、あの日、思いもしませんでした。
     食事も、アクティビティも、全てやんわりと断られていました。さすがに、近付かなければ赤子の手をひねるようなことができるはずもなく、ただただ私が何か誘っては断られることの繰り返しでした。
     こんなはずでは。
     しかし、結局、かなり粘ってみたものの本当に全ての誘いが断られ、私は負けを認めることとなりました。
     そして、このばかばかしいゲームの次の標的は、決められませんでした。
     いえ、本当は諦めたわけではなかったのです。私は最低の人間で、しかも大の負けず嫌いで諦めが悪いのです。ただ、私が彼を狙っていたことを知っていた人には諦めたように見えたことでしょう。

     第二ラウンド、と私は呼んでいるのですが、私と彼が再び近付いたのは、夏のある日でした。
     飲み歩いていた日に、彼と出会って二人でお酒を飲みに行きました。それはとても楽しい体験で、彼にとってもそうであったと聞きました。
     私たちは、朝日が昇るまで飲み明かし、最後にハグをして、陽気に家に帰りました。ハグをしたのです。それは、欧米人がするような挨拶のようなものでした。
     そして、それから月に1度のペースで朝まで飲み明かすようになったのです。時に彼の行きつけの店に行くと、店員さんに「彼が女の子を連れてくるなんて初めてです」などと言われたものでした。また、タクシーすら捕まらなくなった時には(私たちは実家住まいだったので)彼が時々泊まるという親戚の家で飲み明かしました。
     手を繋ぐことがなくても、唇を重ねることがなくても、もちろん体を重ねることがなくても。私は彼にとって特別になれたのだと、思いました。
     だって、彼が二人だけで飲みにでかけるのも、親戚の家に招くのも、私だけだったのです。
     そしてそれは、二人で市外に飲みに出かけたとき、決定的になるはずでした。

    「私はあなたが好きよ」

     彼がベッドの上で、「いいの?」と言ったとき、私はそう答えました。

    「でも、付き合っている人としかだめ」

     そう付け加えたのは、例のゲームを勝利で飾るためです。彼の返事は「そうだね、付き合おう」というもののはずでした。

    「そうだよね」

     彼はごろんと向こうに倒れ、仰向けになりました。

    「え? え? あの」
    「それじゃあ、おやすみ」
    「……わ、私の、片想い……なのかしら?」
    「そうだね」

     こうして私は、第二ラウンドもK.O.されたのです。
     彼は、隣で寝ているのに、何もしませんでした。いえ、正確には友情のハグをしたままでした。
     彼はどこまでも優しく、紳士的でした。愛し合うためのホテルは、ただの小汚いビジネスホテルとなりました。
     そんなことは初めてでした。まさか私の方が、彼から初めてを贈られるなどとは思いもしませんでした。
     次の日は何事もなかったかのように、遊びました。それが楽しかったので複雑でしたし、彼も楽しかったのでまた行こうと言いました。

    ***

     私は再び、彼と飲みに誘います。すると、彼も応じるのです。そしてそんなことは、私だけなのです。
     周囲の人は簡単に「付き合えばいいのに」と言います。
     しかし、私と彼の間にあるのは友情です。友情でしか、ないのです。
     私はこれからも、負けを認めずに、次の標的も決められず、第三ラウンド、第四ラウンドへともつれこむのしょう。
     どうしてこうなったのかは全く、きっと誰にもわからないのですが、ただ一つ言えるのは、これは恋ではないということです。