永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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    再会

     僕はマーロンが亡くなった穴を埋めるように、ギルド内の一、二を争うものとして名を連ねるようになってきた。
     その中で聞くようになったのが、カレンという名前だ。
     もちろん、同姓同名ということはあり得る。カレンというのは男でも女でもあり得るありふれた名前だった。しかし、そろそろ魔法の学校を卒業し、活躍し始めたとしても不思議ではなかった。
     ギルドの拠点は世界中にいくつもあり、僕はカレンの名を聞けばそちらへ向かった。カレンもまた急ぐように移動することが多く、全く見つけられない。ギルドに顔を出してカレンの行方を聞くと数日前に発っているということが何度もあった。

    「カレン? あぁ、名前だけは見たなぁ」
    「ギルドには入ったけど、ソロ専門の魔法使いだって聞いたな」
    「男なのか女なのかもわからないな」
    「そうか……。酒場の女の子は個人情報だっていって口堅いんだよね……」

     意思を持った石、とでもいうのか、ゴーレム達が襲い来るのを盾で受けながら人間の関節に当たる部分を剣で刺し動きを止める。とどめに石斧を持ったメンバーがゴーレムを粉々にすることで、ゴーレムが再び動き出すのを防ぐ。

    「あんたの、その粉々の頭で団子を作るのは何なんだ? 剣がダメになるぞ」
    「あ……、癖なんだよ。前さ、とどめをさしきれてなくて危なかったことがあって」
    「あー……そりゃ仕方ないな」
    「だけど、それがディスが必ず帰ってくる理由なのかも」
    「大量の薬草も?」
    「仕方ないだろ、回復魔法も使えないんだから」

     即席パーティーは、深いところまで話を聞かれないのがいい。流れ作業のようなゴーレム退治が終わって、酒場に依頼の達成を報告に行く。僕が報告する時、即席パーティー名はいつも「ああああ」だ。
     世界中の依頼達成報告を眺めていると、「ああああ」の三つ下にカレンという文字があった。場所は隣町。報告があったのは昨日だ。なんてことだ。この町に来る前に立ち寄ったというのに。

    「ディス、打ち上げは」
    「ごめん、僕は出発するよ」
    「そうか。……おい、ディス?」
    「ん!?」
    「道具袋、穴開いてんぞ」
    「……」

     慌てて酒場の外に出ると、僕が歩いてきた道には金貨や売ろうと思っていたアイテムが転がり、人々が蟻のように列をなして拾っていた。
     名前が書いてあるわけでもないアイテムを返してもらえるわけがない。思わず店の前で崩れ落ちた。

    「僕の……稼ぎが……」
    「……今日の分け前、まだ分けてなくてよかったな……」
    「だけどこれじゃ出発できないよ。あーあ……」

     旅費を稼でいる間に、カレンは少し遠くに移動していた。そこもまた、少し前に僕がいたところだ。

    「あれ、ディスだ。久しぶり」
    「……ルコス」
    「何だよ、報告掲示板なんかとにらめっこしても何にもならないだろ」
    「僕、このカレンっていう子に会いたいんだ」
    「あー、ソロ専門の……。でも、けっこう太っちょでさ、なんていうの? 動けるデブって感じだったぜ」
    「え?」

     太っちょのカレンか。
     想像つかないや。

    「一週間でこんなに移動してるなんて、何かから逃げてるのかねえ」
    「……逃げ……」

     何かから逃げているとは、考えもしなかった。
     僕は、もしかしたらカレンも僕を探しているのかも、なんて考えていたくらいで。
     だってもう4年だ。僕がたまたま変わらなかっただけで、考えも変わるのかもしれない。
     それとも、太っちょのカレンだと僕が嫌がるかもとか考えているのかな。だとすれば、今すぐに会って僕らの友情が変わらないことを証明したい。
     だけど、本当に逃げているのだとすれば……。

    「僕から逃げてるのかな。太っちょになってたって気にしないのに」
    「なぁ、ディス。しばらくソロで依頼受けてみたらどうだ? 『ああああ』じゃ、相手にだってどこにいるのか伝わらないだろ」
    「……そうだね。何で僕の方から発信するってこと、思いつかなかったんだろう。ありがとうルコス!」

     僕はさっそく簡単な依頼を受けて、個人名で依頼達成の報告をした。これで、カレンにも僕がここにいるってわかるはず。考えてみれば、カレンは僕が個人で依頼を受けたところを回っている。逃げてるんじゃない。カレンも僕を探してくれているんだ。
     最近はギルドでパーティーを組むのが楽すぎて個人で依頼をこなすことが少なくなっていたから、一人で攻撃も防御も回復もするというのはけっこうハードなことだと改めて思い知った。
     これも、カレンが思い出させてくれたのかな。
     まだまだ勇者には届きそうにない。

    「!」

     人と獣の中間のような魔物が、鋭い爪で迫りくる。盾で防ぎつつ、片手で剣を振り下ろしながら踏み込むと、僕の真似をするかのように、爪で剣を受け止めた。
     知能が高い。スピードは獣のもの、知能は人間……それでも、幼児くらいか。
     最近拾ったアイテムの振ると火の玉が出る杖で距離を取り、凄まじい速さで距離を詰めてくるタイミングを狙って攻撃する。当たった……けど、こちらも軽く爪が掠った。このままじゃ消耗戦だ。
     また距離を取ると、また同じように距離を詰めてきたので、そのタイミングで攻撃をする。しかし、その瞬間魔物がしゃがんだ。がら空きになった腹を深く抉られる。
     慌てたらだめだ。回復薬をがぶ飲みして、続けて筋力を強化する補助薬を一気に飲む。

    「お前に負けるわけにはいかないんだよ!」

     まだだ。まだカレンに会ってない。
     素早く動くのだから、そのスピードを利用して……。あぁ、畜生。傷が完全にふさがってない。
     魔物がまた攻撃を仕掛けてくる。先程と同じようにしゃがんだ隙に、後ろから斬りつける。筋力が強化された攻撃は、魔物に致命傷を与えた。魔物が倒れた上を跨ぐように立って、その体に剣を突き立てる。魔物が暴れて、跨ぐように立っている足の肉が少し削がれた。荒い息が絶えたところで、ようやく剣を抜いて血を払う。
     もう一度回復薬を飲んでから、町へと戻った。

    「……依頼達成」
    「はい。報酬よ」
    「……」

     今日はもう寝よう。そう思って報告掲示板を見ると、一番上に僕の名前が出た。カレンは、数日前に隣町で依頼をこなしている。その数日前には、更に隣の町……。こっちに近付いてる?

    「あの」

     肩をとんとんと叩かれて、振り返る。
     そこには知らない男が立っていた。傭兵らしからぬだらしない体型に、首をかしげる。

    「何か?」
    「ディスさん……ですよね? 俺のこと、探してるって聞いて。いやー、ソロで依頼受けるのけっこう厳しかったけど、こうしてディスさんに声をかけてもらえるなんて」
    「……えーっと……誰?」
    「あ、すみません。俺、カレンって言います」
    「……」

     一瞬遅れて理解した後、くらりと立ちくらみがした。
     命がけで、カレンにわかるように戦って、人違い?
     いや、カレンは男にも女にも使えるありふれた名前。わかってたはずだ。

    「も、もしかして、俺とパーティー組もうっていうお誘いとか……ですか?」
    「……い、いや、君じゃない。僕が探してたカレンは、君じゃない」
    「え……」
    「悪い、疲れてるんだ。これからも頑張って」

     ルコスが言ってた太っちょって、彼のことだったのか……。
     宿に戻って、ベッドに倒れ込む。本当に疲れていたし、カレンの手掛かりはなくなったし、理想の最強の傭兵には程遠いし。
     心が折れそうだった。

    「……」
    「おう、ディス、元気ないな。カレンって奴、この町に来てただろ?」
    「ルコス……。同じ名前の別人だった。僕が探してるカレンの手掛かりはなくなっちゃったよ」
    「そんな時には依頼だ! この、オークの巣の掃除。頼むよ。報酬いいんだ」
    「うーん……、いつ?」
    「明後日の正午。それまでには少しはしゃっきりしといてくれよな」

     能天気なルコスがいた方が少しは気が紛れる。
     月に一度になっていた両親への手紙を書いて、二日間のんびりと過ごすことにした。新しい装備を買った。料理もした。けれど結局、町の外で剣の稽古をした。

    「ルコス、来たよ」
    「よし、行くか」
    「二人?」
    「そ。人数は少ないほど報酬が増えるからな。ディスならオークなんかに引けはとらないだろ」
    「まぁ……、一体なら一人でも倒せるけど、巣だろ?」
    「大きい巣じゃないから大丈夫だよ」

     大丈夫って言って報酬が高い依頼なんて、ろくなものじゃないんだけどなぁ。
     まぁ、オークの戦い方はわかってるし大丈夫だろう。かなりカッコ悪い戦い方だけど、最悪の場合にはルコスの毒を打って逃げ回れば倒せる。
     オークの巣は洞窟を掘り進めたような形になっていることが多く、一本道だ。まだ蟻の方が複雑な巣を作るんじゃないかと思う。今回も例にもれず、やけに広い一本道の洞窟だった。

    「……ディス、俺は今、楽勝すぎて怖いと思ってる」

     倒れたオークから剣を抜き、僕も頷いた。ルコスの言う通り楽勝だった。
     一本道になっている洞窟の巣の最奥で、ルコスと二人で首を傾げる。

    「全体的に、弱いというか……レベルが低かったよな」
    「小柄だったし」
    「まぁ、出るか」
    「うん」

     剣を鞘に戻し、一本道を戻って出入り口を目指そうとしたとき、ビリビリと身が震えるような咆哮が、耳をつんざいた。
     再び剣を抜いて警戒しつつ進むと、今までこの洞窟にいたものや、今までの依頼で倒したオークとは比べ物にならないくらいの巨大なオークが小さなオークの遺体に縋るように咆哮を上げ続けていた。

    「……ありゃあ……倒したオークの、母親か?」
    「楽勝とはいかなそうだ」

     軽口をたたいてみたが、楽勝どころか、正直なところ勝てるかもわからない。腕が僕の胴くらいあるし、その傍に投げ出されている棍棒はもはや巨木だ。かすっても危ないだろう。やけに広い洞窟は、この母親のためのものだったのだ。
     魔物に人間と同じような感情があるとも思えないけど、子どもを殺された母親の怒りは計り知れない。脅威になることは間違いなかった。

    「ルコス、これ、魔法を全体化するアイテム。守備力アップと素早さアップの補助魔法頼む」
    「わかった」

     ルコスが全体化させた補助魔法をかけて、武器を構える。
     素早さが上がったので、オークが棍棒を持ち直すまでに一撃を入れることができた。けど、浅い。
     耳が痛くなるような咆哮を上げて、オークが棍棒をめちゃくちゃに振り回す。

    「どうする!? 隙をついて逃げるか!?」
    「こいつが町までついて来たらどうする! 逃げるなら、お前の毒を盛ってからだ!」
    「5000ゴールドに命賭けろってのかよ! ったく、とっておきの世界樹の葉、預けとくからな!」

     僕がマーロンを喪った時にとどめをきちんと刺す癖がついたとすれば、ルコスは世界樹の葉を常備する癖がついたらしい。あらゆるアイテムをたくさん持っている僕も、世界樹の葉は高価なのであまり持たない。
     ルコスから世界樹の葉を受け取り、オークから逃げ回りながら守備力を下げる薬をオークに投げ続ける。

    「行け!」

     ルコスが飛び出す。うまく懐に入り込んだルコスがオークに毒針を突き立てる。瞬間、虫を叩くようにオークがルコスを手で払った。強烈な張り手に、ルコスの体がバキバキと耳を覆いたくなるような音を立てる。
     ルコスの毒針を外そうと躍起になるオークの足元からルコスを引っ張り出し、普段はダンジョンのトラップを避けるために使う、わずかに体が浮くアイテムを使って引きずる。洞窟を出たところで世界樹の葉を取り出したが、地響きのような足音がした。ルコスに起きてもらうのはもう少し逃げてからがよさそうだ。
     ルコスを引き摺ったまま洞窟の周りに広がる森に逃げ込むと、木で隠れているはずなのに、オークは的確に僕達を追ってきていた。世界樹の葉を揉んでルコスの口に突っ込む。すると、完全に死んでいる見た目のルコスが目を剥いた。そのまま回復薬をルコスの口に突っ込む。

    「苦ぇっ!!」
    「追ってきてる」
    「マジかよ……」
    「今度は僕が足止めするから、町に助けを呼びにいってくれ」
    「わかった」

     二手に分かれて剣を抜くと、毒が効いているのか、オークの土色の顔でも顔色が悪いように見えた。
     いつものように、盾で攻撃を受けながら剣で攻撃をする。が、盾がボコボコになるまでにそう時間はかからなかった。
     攻撃を受ける度に回復薬を飲むが、さすがに数に限りがある。もう、あと一撃食らったら、死ぬ。30分以内にルコスが戻ってきて世界樹の葉を食べさせてくれるというのは、絶望的だ。たぶん何本か骨が折れているし、見たくないから見ていないけど、血まみれだと思う。

    「いい線いったと思うんだけどなぁ」

     振り下ろされる棍棒が、ゆっくりに見える。僕は早くも、走馬灯……というか、今までの人生のことを考えていた。

    「……カレンに会いたい」
    「風よ爆ぜろ、火よ喚け。龍の息吹のごとく燃え盛れ――ゴルグアリア!!」

     目の前が爆発し、動けなかった。
     強力な攻撃魔法をくらったオークの巨体がゆっくりと後ろに倒れていく。

    「こんなのを一人で追い詰めてたの? やるじゃない、ディス」

     明るい、歌うような声。羊のようで可愛い栗色のお団子頭。くりくりの目。

    「……探したんだよ、カレン」
    「まったく、私が見つけてあげるんだからディスは勇者になることだけを考えてればよかったのよ!」
    「うん……」

     泣きそうになりながら、僕は幼馴染との再会を喜んだ。