永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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    time atack

     ニューゲーム
    →ロードゲーム
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     やはり、僕の想像通りあとはクリアするだけなのだろうか。最初に訪れた町の西にある森は、特に手ごわいボスがいることもなかった。
     大輔は、まだ危機に直面したことがないからか、どこか楽観的だ。こんな奴だったかな。

    「……」
    「おっ、変なキノコ!」

     僕の中で、大輔への不信感が募っていた。些細な言動に、どこか違和感がある。こんなにはしゃぐような奴じゃない気がする。でも、もしかしたら明るくしようと気を使ってるのかも。
     この大輔は、本当に大輔なのだろうか。
     もしかして、《Master》が化けているんじゃないか。僕には玲に、玲には僕に見えた。奴は姿を変えられる。
     大体、僕たちがこの世界にきたのはゲームソフトに触れたからだ。母さんも来ないのに、どうやって大輔が来るのだろう。子ども限定だったとしても、見舞いに来てわざわざゲームソフトに触れるか? 現実の僕たちは家で寝込んでいるのだろうか。病院にいるのだろうか。
     疑ったらキリがないな。

    「大木くん、待ってよー」
    「モンスターだ。後ろからだったよな!?」

     ――でも、《Master》だったとしたら、こういう風に率先して戦って助けてくれるのはおかしいかも。……いや、油断させるためかも……。

    「ああ、もうっ」
    「わっ、烈クリティカルだ!」
    「やるなぁ」

     考えるだけ無駄――とは、言い切れないところが怖い。
     大輔が来て、玲にストレスが……なんて考えてたけど、僕のほうがよほど消耗してる気がする。

    「烈、次の村が見えてきたぞ!」
    「本当だ。見るからに小さい村っぽいなぁ。……装備おいてるかな」
    「どうだろ? けっこうギリギリになってきたよね」

     確かに、森を抜けて丸一日経った頃から、玲が頻繁に回復魔法を使っている気がする。
     防具も武器も、次のランクのものがあれば買い換えたいところだ。……あんな小さな村に売っていても不自然だけど。
     村に足を踏み入れると、どんよりとした空気が流れている。村の中を散策しても、全くと言っていいほど活気がなかった。

    「子供がいないんだ」

     大輔が呟く。なるほど、言われてみれば子供が一人もいないため、前に寄った町のように明るい声も聞こえない。黒騎士の話もほとんど聞けず、いい武器や防具も置いていなかった。
     少しだけ大きな家に入ると、居間に老人が立ち尽くしていた。

    『わしはこの村の村長をしているジョーセフじゃ。旅の騎士様、折り入って頼みがある』
    『何でしょう』
    『村の様子を見てもらったとおり、この村には子供がおらん。北の洞窟をアジトにしている盗賊が子供たちをさらっていったのじゃ。王様は辺境の村のために兵を動かしてはくださらんのです。この前立ち寄った騎士様も行ってしまわれた』
    『もしや、黒い鎧の……?』
    『そういえば、黒い鎧でしたな。騎士様、どうか盗賊を退治してはくださらんか』

     村長が言うと同時に「はい」「いいえ」の選択肢が出た。

    『メア、どうする?』
    「はいでしょ」

     お姫様のセリフにかぶるように玲が言う。はいを選択すると、「黒騎士は遠ざかりますが、盗賊を退治しますか?」というメッセージと「正義が大事」「急げば大丈夫」「やっぱり王様の命令が大事」の選択肢が現れた。

    「急げば大丈夫じゃない?」
    「二兎を追うものは一兎も得ず……とか、ならなきゃいいけど」
    『放ってはおけません。急いでカタをつけましょう』

     そう言いつつも玲の言うとおり「急げば大丈夫」を選ぶと、視界の右上に制限時間が現れた。そういえば、数少ないきちんと見ることのできたチュートリアルで制限時間のこと言ってたっけ。

    『北の洞窟へは、1時間ほど歩けば着くでしょう』
    「えーっ!? 制限時間、20分だよ!?」

     確か、制限時間と一緒に説明があったのは――……。

    「……近道、近道だよ! どこかにあるんじゃない!?」
    「誰か村人にヒント聞かなきゃ……」

     手当たり次第に声をかける。けれど、暗いばかりでいい情報はないように思える。

    『あの子を返して……』
    『昔は北の洞窟で鉱石を掘っていてそりゃあにぎわっていたんだよ』
    『盗賊は、村長さんが見たといっていたわ』
    「村長!?」
    『騎士様、頼みましたぞ。盗賊のアジトは1時間ほど歩いたところにある北の洞窟です』
    『騎士様、頼みましたぞ。盗賊のアジトは1時間ほど歩いたところにある北の洞窟です』
    『騎士様、頼みましたぞ。盗賊のアジトは1時間ほど歩いたところにある北の洞窟です』
    「……うーん……」

     玲があっと声を上げる。

    「烈、トロッコがどこかにあるんじゃない!? 鉱石を運ぶ奴。大抵の鉱山のまちにはあるよね!」
    「でもどこに……」
    「あの村人、話聞いてないんじゃないか?」

     大輔が、バーで飲んだくれたおじいさんを指差す。うーん……確かに、昔の武勇伝とかを語るおじいさん、ベタだ。ああいう酔っ払いから聞ける話の有用性は0か100か、みたいなところがある。

    『昔、仕事に行くのが楽になるように井戸から北の洞窟までのトロッコを敷いた。きっと盗賊は子供たちをさらうのにそれを使ったんじゃ。ワシのせいじゃあ~』
    「ナイス!」
    「井戸だね!」

     制限時間は残り15分。そのトロッコが使えれば間に合うかもしれない。
     井戸にかかったハシゴをおりると、井戸の水面より少し上のほうで人一人が通れそうな穴が開いていて、横道が伸びていた。その先に、おじいさんの言うとおりのトロッコがあった。制限時間のそばに近道発見! という文字が現れる。

    「やった! 早く乗ろ!」
    「うん」

     玲と僕が乗り込むと、大輔が後ろからトロッコを押した。トロッコが走り出すと、大輔は器用に飛び乗る。乗り心地は最悪だったけど、なんとか残り5分というところで洞窟にたどり着いた。制限時間がクリア! という文字に変わった。
     洞窟の奥に進むと、むき出しの武器がずらりと並んだ部屋に男がいた。

    『おや、お客さんとは珍しい』
    『子供たちを返してもらおう』
    『……村の人には見えないが、頼まれたのかい? よく知らない人々を助けるってことか?』
    『そうだ。盗賊を退治するのに理由はいらない!』

     また選択肢だ。「切り捨てる」「説得する」……どうせこの後強制バトルになるんだろうに、なんの意味があるんだか……。と、僕なら思う。
     でも玲は――……。

    「できるだけたくさんのセリフを聞きたいから説得する!」
    「……言うと思った」

     説得すると選ぶと、盗賊は肩を竦めた。

    『私は盗賊じゃありませんよ』
    『言い逃れをする気か』
    『私は装備屋です』
    『子供たちはどうしたんだ?』
    『可哀想だったので城下町の施設に預けましたよ』
    『なぜ!』
    『なぜ? 村人が子供たちを捨てたからですよ! 私に売りつけてきたんです! 子供たちが不憫でならなかったから、一応金は渡しましたよ……。私が買い取らなければ、あの子達はどうなっていたか……』
    『信じられるわけがないだろう』
    『そりゃあ、そうだ。しかし契約書はありますよ』

     契約書には、村長の名前があった。玲がうーんと唸る。盗賊の話なんて、と思ったけれど今回ばかりは玲の聞きたがりが功を奏したようだ。

    『メア、確か盗賊を見たのは村長だという者がいましたね』
    『村長が私を盗賊に仕立て上げてあなた達に始末させようとしたのでしょう。何なら、子供たちと施設から届く手紙もあります』
    『証拠品をすべてお借りしてもよろしいかな?』
    『メア、せっかくですからこの商人から装備を買って差し上げなさい』
    『助かります!』

     有無を言わさずに武器と防具の購入画面に切り替わった。
     玲は新しい魔法の杖と神官のローブ、大輔はより強いブーメランと新しい甲冑。そして僕は、盾を買うか迷ったけれど、盾は諦めて槍と新しい甲冑を買った。こうして全員分の装備を揃えてトロッコで村に戻る。
     村長の告発についての会話はなく、「メア達は村長の悪行を村人に話した!」と表示されただけだった。

    『まさか、野蛮な騎士があの商人ときちんと話をするとは』

     と、老人である村長が腕に力を入れると、筋肉がムキムキになった。腕も足も、首さえも筋肉が盛り上がる。顔も若々しくなって現役のプロレスラーみたいな見た目に変わってしまった。というか、この人が村長に化けていたのだろう。

    「え、バトル?」
    「大丈夫だろ」

     玲をちらりと見ると、玲の不安そうな視線とぶつかった。
     人を斬れるのか。

    「やるしかないよ……。僕が一番攻撃力高いから、最大ゲージ溜めるね」
    「オレ達が時間稼ぎだな」

     強制的にバトルに入った。
     剣を構えると、じゃり、と砂を噛む音がする。
     大輔がブーメランを投げると、玲が魔法で攻撃する。僕は攻撃力ゲージが最大になるのを待つ。――本当は、自分が人を刺すのが怖いから。

    「はあっ」

     槍が村長だった人のお腹に当たった瞬間、ぎゅっと槍を握り直して奥に押しやる。嫌にリアルな血のエフェクトが飛んだ。しかし、まだ勝利してはいなかった。お腹に刺さった僕の槍を掴んで、すごい力で引き抜く――と、僕のお腹に柄の部分がめり込む。

    「がっ、はっ」
    「烈!」
    「烈、しっかりしろ!」

     麻痺か何かだろうか。まったく動けずにいる間に玲と大輔がなんとか村長を倒した。勝利のファンファーレが聞こえてようやく立ち上がることができた。

    『騎士様、ありがとうございました。子ども達を迎えに行くので、護衛をお願いできませんか?』
    『城下町までの護衛は引き受けましょう。こちらも急ぐ身、帰りは自国の兵士に頼んでいただきたい』
    『もちろんです! ありがとうございます! あの子、無事だといいけど』

     城下町を目指すため、休む暇もなく出発した。
     ぐりぐりと、人間に槍を突き刺す感覚。ぷつりと皮膚が裂ける感触。ゲームをクリアするとき、僕は正気でいられるだろうか。