永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。
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    「烈、今日掃除当番なんだ、先帰ってていいよ」
    「待つよ」
    「うん、じゃあ終わったら来るね」

     僕が待つのを見越していたのだろう。玲は即答して走って教室に戻った。好きな人と帰りたい、とかないのだろうか。まあしばらくは僕がブロックするつもりだけど。
     双子というのはやっかいなもので、関係があやふやだ。自分のようで、自分じゃない。友達とも恋人とも違う。小学校に上がるまでは二人の世界という感じだったし、いつも一緒にいるので一緒にいない方が変な感じ。
     それに終わりはあるのだろうか。最近よくそんなことを考える。高校生になったら、やっぱり何か変わるのだろうか。これはまったくの偶然なんだけど、玲は僕と同じ高校に行く気でいるようだ。

    「烈」
    「早かったね」
    「ばびゅんっと終わらせたよ!」

     玲が両手で小さくガッツポーズを作ってどんなに頑張ったかを表す。でもそれって、僕以外には伝わらないんじゃないかなぁ。

    「お店が閉まる前に買いに行かなきゃ! 烈、早く!」

     待たせてたのは玲のくせに、まるで僕が待たせたように口を尖らせる。このわがままなところが我が姉ながら可愛いと思う。
     今日はお小遣い日翌日。そして気になるソフトの発売日だ。僕たちはよくテレビゲームをする。格闘ゲームもシューティングゲームもそこらへんのゲーマーよりは得意な自信がある。僕も、玲も。
     そんな僕たちの月一の楽しみがこの買い物ってわけだ。

    「たまにはRPGもいいよね」

     玲の一言で、購入するソフトは決まる。
     今回は探索型RPG。探索型っていうのは大体謎解きが付随してる。考えずに早撃ちするゲームが大得意な玲が飽きないかが隠れた争点となる。
     ストーリーは重厚(自称)、ミニゲームも多く声優の起用はなし、そして何よりホラー要素はない。僕としては申し分ないように思えた。というわけで玲に言われるままこのソフトに決まった。ちなみに玲の決め手はキャラクターがかわいいから、だ。
     この前こういう風に決めた猫の育成ゲームは失敗だったと僕は思うけど。結局あれ、何がクリアなのかわからないし2回目を起動することはなかった。

    「玲が買ってくるから烈はここで待っててね」
    「うん、よろしく」

     レジに二人で並ぶのも野暮ったいのでレジは玲に任せて他のソフトをぼんやり見る。むぅ、ハードを増やすべきか……。

    「烈、お待たせー」
    「よし、帰ろうか」

     顔を上げて目を瞠った。
     玲の後ろに明らかに怪しいボロボロのローブをかぶった人がいる。玲にぴったりとくっついて。体格的には男だろうか。怪しい。とても怪しい。何故玲は気付かないんだろう。嫌な顔一つしないで玲はこちらへ歩いてくる。

    「あのね、初回特典のしおりが付いてきたよー」
    「へ、へぇ……」

     僕としては後ろの男の方が気になるんだけど。
     玲のバッグを掴んで玲を引っ張る。

    「どうしたの? 烈」
    「いや、玲が鈍感すぎるんだよ」
    「見えているのか」

     男の声がする。ていうかどこまでついてくるんだよ。

    「せいぜいあがくがいい。この娘がゲームの封を切らないことはないだろう」
    「はぁ?」

     瞬きした次の瞬間には、男はいなくなっていた。玲は相変わらずだ。

    「……玲、もうちょっと周りに気をつけてね」
    「ん? あのさ、宿題どれくらい出た?」
    「今日は全然」
    「えっ!? 玲のクラスすごい量の宿題が出たんだよ!」
    「残念だねー」
    「手伝ってくれる?」
    「自分でしなきゃね」

     これは僕たちのルールだ。宿題を終わらせてからじゃないと遊ばない。ゲームも外出も、宿題の後。放課後に宿題をして外出すると全然時間がないのでどうしてもゲーム機を手に取ってしまう。

    「あー、早くやりたいなぁ」

     玲は目を輝かせてゲームソフトの入った袋を持ち上げる。一方僕は、さっきの不審な男の去り際の言葉が引っかかるのだった。

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    「終わったあああ!!」
    「おめでとう」

     僕もちょうど弁当箱を洗い終わったところだ。ついでに体育服も洗ったし、明日の予習もした。

    「烈、烈!」
    「ご飯は?」
    「ママと一緒に食べる!」
    「母さん、今日遅いんじゃなかった?」
    「家につく30分前に連絡してってメールして!」
    「はいはい」
    「パパはたぶん今日も夜中だし、待てないよねー」

     自分で考えをメールすればいいのに、玲はゲーム機を取り出しながらメールの内容を僕に伝えてくる。

    「ママから連絡きたら、玲がパスタ作るから」
    「パスタね」

     夜ご飯麺類か……。
     メールを送信すると、母さんからはすぐに返事がきた。予想通り残業で、9時前には帰るそうだ。

    「9時前には帰るって」
    「9時か……。あと3時間だね。それじゃあ、スタート!」

     玲がセットしたソフトが読みこまれている間に取扱説明書を読む。……のが、新しいソフトを買ったときのいつもの流れなのだが、今日は違った。

    「烈、なんか、……」
    「……」

     玲。
     倒れる玲を支えることもできなかった。
     視界は暗転、僕は体の支えをなくし、床に崩れ落ちた。いや、どこか深くへ落下していく浮遊感の中で意識は薄れて行った。

    …loading

    「烈、烈!」

     玲の声がする。朝だろうか。
     目を開く。そこは闇だった。僕と玲の姿以外はただの暗い闇があたりに広がっている。スポットライトが当たっているわけでもなく、僕と玲が光っている、不思議な感覚。

    「玲、……夢?」
    「違うよ……。玲起きてるもん」
    「ようこそ、お二人さん」

     不意に聞こえた声に玲が肩を震わせる。辺りには何もなく、どこから聞こえてくるのかもわからない。

    「この度は『Knight ~Mea Kalpa~』を購入してくれてありがとう!」
    「何これ? うちのテレビ3Dだったっけ?」

     それにしてはリアルすぎる。
     玲が僕の手をぎゅっと握る。
     それにしてもこの声、どこかで聞いた気がする。

    「私は《Master》。ゲームマスターだ」

     そうだ。ゲームを買う時に玲の後ろにいた不審者!

    「ルールはただ一つ。ゲームオーバーで君達は死ぬ。それじゃあ、健闘を祈る」
    「な、何……今の」

     目の前に二つの道が現れる。それぞれニューゲーム、オプションと立て札がある。

    「やっぱ新技術だねー。3Dってほんとリアル。オプション!」
    「玲、ちょっと待って」

     既にすたすたと歩いていっている玲を慌てて追いかける。これ、絶対3Dじゃないから!!

    「あれ? ハードモード以外選べないや。まあ別にいいんだけどね、サウンドは?」

     玲が目盛りを動かすと音を確認するようにポン、と音がする。
     しかし、どういうことなのだろう。夢にしては頬をつねると痛いし……。
     あの不審者、やっぱり何か関係があるのだろうか。

    「よし、決定!」

     それに、タイトル画面の前の《Master》と名乗る声……。
     やっぱ怪しいよな。

    「玲、一緒に行かなきゃ」
    「うん!」

     よくわからないけれど。
     僕が玲を守る。それでいいだろう?