永遠少年症候群

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罪を売る嘘つきな双子

「ってわけで、私達は、悪くないと思うの」
「そうだね、悪くない」
「お前らなぁ!」

 靴箱付近で、何やら人だかりができていた。
 無視して通り過ぎようとする俺の腕を捕まえ、笑美も人だかりの中心をのぞき込んだ。野次馬根性丸出しだな、こいつ。

「あれは……」
「うちの学年の双子だね」
「……篠崎」

 笑美の肩をぽんっと叩く、金髪の男。笑美には嘘を消すロボットだとか嘘を吐いている隣のクラスの篠崎だ。

「うん、香月ちゃんと、星哉くんだよね」
「あー、あいつらか」

 去年姉の方と同じクラスだった。休み時間ごとに弟が教室を訪問してくるので、女子がきゃあきゃあ騒いでいた。

「去年同じクラスだったけどな、たぶんあいつらが悪いんじゃねぇの。嘘吐きなんだよな」
「一方的に悪く言うなんて、だめだよ。何か理由があるのかも!」
「そうだ、鴨川さん」

 篠崎が、笑美にひそひそと何か話している。

「……よし、行こう渉汰!」
「出た、このパターン」

 俺が首を振ると、笑美は俺のかばんを掴んだ。

「もう、行きたくないの?」
「……いや、別に」
「じゃあ、オレが一緒に行こうか?」

 篠崎がにこにこと進言する。
 こいつマジで笑美に惚れてるのだろうか。

「え、いいの?」
「あーもう、俺が行くから! 篠崎お前帰れ!」
「ひどいなぁ、別にいいじゃないか」
「そうだよ、仲間はずれはよくない!」
「……笑美、こいつは……」
「考えてみてよ! 嘘を消すロボットvs嘘吐きな双子だよ!?」

 笑美の肩越しに、篠崎の笑顔が固まったのが見えた。
 だよな、あれ嘘だし。

「……あ。オレ、ちょっと用事思い出したかも……じゃあね、鴨川さん」

 篠崎はそそくさと帰っていった。
 笑美はがっくりと肩を落としていたが、俺はもう笑いを隠しきれなかった。

「夢の対決が……」
「で? あいつらは何なわけ?」

 話を変えようと、俺はまた泥沼にはまっていく。

「んーと、超能力といえば超能力なんだけど、気付かないうちに能力を使ってる感じなんだって」
「うん?」

 超能力とどう違うんだ。
 制御出来てないと超能力じゃないのか?

「罪を売るんだって」
「……罪をなすりつけるんじゃなくてか?」

 それは絶対になすりつけるだと思う。

「ううん、罪を与える能力なの! 言いかえれば、試練を与える天使か神様、仏様!」
「話がでかいな」

 神様仏様はないだろう。

「うん、まぁね。今回は直接インタビューとかできないから……どうしようかなぁ」
「別にいいだろ、写真撮るくらい」
「そうだね、香月ちゃんと星哉くん!」
「何?」
「誰?」
「私ね、2組の鴨川笑美って言うんだけど」
「……あぁ、知ってる」
「あのね、私、卒業までにいろんな人と写真撮っておきたくて、でね、一緒に撮ってもらっていいかな?」

 双子は無言で顔を見合わせた。

「「嫌だ」」

 アルトとテノールがきれいにハモる。
 しかし、笑美を挟んでピースして立った。
 撮れってことか……。

「はい、チーズ」
「……ありがとうっ」

 笑美がにこにこと笑う。
 双子はふっと鼻で笑った。

「私達」
「別に」
「「突然じゃんけんしたくなっただけだから」」

 ……嘘吐きめ。

Twin in their house――双子、家にて――

「鴨川さんって、彼氏いたのね」
「電波系って聞いてたけど」
「私達にも、何か電波を受信して話しかけてきたのかしら」
「そうかもしれないね」
「だとしたら、何かな」
「さぁ? 嘘吐きだからじゃない? それか、それで浮いてるから」
「そうだったところで関係ないわね」
「そうだね」

 とんとん、ノックの音がする。

「……香月ちゃん、星哉くん、ご飯できましたよ」

 一度お腹が鳴った。

「……いらないわ」
「……いらない……」

 継母はにっこり笑う。

「そう、残念だわ」

 一度、私達のご飯をつまみ食いした猫が死んだ。
 継母の行動はすべて、私達を死に追いやろうとする。

「……嘘を吐き続けたら……」
「……反抗し続けたら……」
「生き延びれる、よね?」
「……生き延びれるんだ」

 私達は生にすがるあまり、人間にすがれなくなった。

罪を売る嘘つきな双子――了
お題元:水性アポロ