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永遠少年症候群

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ファンタジー、恋愛要素、ハッピーエンド多め。たまに暴力やグロテスクな表現があります。
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命を写真に収める地球に優しいクラスメイト

 私には、それは消えてしまったように見えた。
 拾い上げた写真に写っている二人は、もう目の前にいない。

「あ……」

 消えた。そう、消えたという言葉がぴったりだったのだ。

「消えた、よね?」
「ん? まぁ、そうだな」

 名前も思い出せない彼……。クラスメイトが、私から写真を奪った。
 首からポラロイドカメラを提げている。写真部。そう、写真部の……。

「鴨川さんて、この辺だったんだ?」
「う、うん」

 にこやかな笑顔を浮かべているけれど、妙に空々しく感じる。
 あのカメラのシャッターを切ろうとした瞬間、彼に殴りかかろうとしていた不良たちが消えたのだ。まるで最初からいなかったみたいに。

「ま、またね!!」

 振り向きもせずに走って家に帰った。塾をサボった私を呆れたようすの母が出迎えた。でも私は、そんなこと気にならないくらいドキドキしていた。写真を撮ったら消えた。ねぇ、これって、超能力か何かなんじゃない?
 数時間前の出来事を思い出しては、わくわくする。同時に少し怖くもある。

●●●

 私は、塾へ行くために急いでいた。途中で飲み物を買うためにコンビニに立ち寄ることにした。コンビニに立ち寄る時間を作るために急いでいたといった方が正しい。
 コンビニには怖そうな人達がたむろしていた。できるだけ目を合わせないように、コンビニに入った。
 そこで、立ち読みしているクラスメイトを見かけた。
 確か写真部だったはずだ、と名前も覚えていないのに思ったのは、常に首からポラロイドカメラをぶら下げているから。もの静かで、あまり声を聞いたことがない。
 しかし、私の高校は私立高校で、県内各地から生徒が集まるから家の近くでクラスメイトに会うなんて滅多にないからだろうか。

「…………」

 話しかけてみようかな。
 そんなことを、思ってしまった。今思えば、放っておけばよかったのだ。

「……あ、あの」
「…………」

 ねぇ、と続けようと近づくと、彼はすたすたと出口に向かって歩き始めた。
 空振りした右手が非常に痛々しい。

「……無視された……?」

 さすがに、少しムッとして追いかけると、彼はコンビニの前にたむろしている不良達に何か話しかけている。
 なんだろう、内容がよく聞こえない。

「ゴミを散らかすなよ」

 え? そんなこと、言うの!?
 ケンカなんかになったら、彼は絶対に勝てそうにない。
 不良達はへらへら笑って立ち上がった。

「はいはい、すいませんねぇ。大きなお世話なんですけどぉ」
「止めとけよー、よっちゃん」

 よっちゃんと呼ばれた方が、彼に殴りかかろうとした時、首から提げているポラロイドカメラのシャッターを切った。
 どこからあんな光が出るのかと思うくらいの、目が眩むほどのフラッシュ。実際、一瞬目が眩んだ。真っ白な視界に色が戻ってきたときには、よっちゃんはもういなかった。
 同じように眩しいフラッシュが光るたびに不良達は次々に消えていった。
 私はポラロイドカメラから私の近くに落ちてきた写真を拾い上げた。
 ぱたぱたと振ると現れた、不良の姿。
 でも、彼らはもう目の前にはいない。

「…………消えた……の?」

●●●

 昨日のことは、現実だったのだろうか。

「おはよう……」
「…………」
「ちょっと……聞きたいことあるんだけど……」

 名前は、昨日の夜名簿を見て思い出した。

「堀田くん」

 彼はチラリと私を見て、面倒そうに教室から出て行った。

「ちょっと、待ってよ!」
「何?」
「昨日、コンビニで会ったでしょ」
「あぁ……。なんか、意味不明なこと言ってたけど、頭大丈夫?」
「き、消えたじゃん! その、カメラで撮ったら……!」

 彼は一瞬の沈黙の後、またどこかへ歩き出した。ついていったら、何かわかるかな。

「本当に、人が消えるようなことがあると思ってるの?」
「……も、もしかしたら、とは思ってる。誰にも言わないから!」

 彼が突然立ち止まったので、真後ろにいた私はぶつかってしまった。見た目より背が高いなぁ。
 堀田くんが入った教室、写真部の部室は薄暗かった。

「鴨川の認識に間違いはないよ」
「……やっぱり……。写真に人を閉じ込めるのね?」
「このポラロイドだけ。古いだろ。じいちゃんが写真屋なんだ」
「そうなのね……」
「俺は、一応……環境に悪いやつをターゲットにしてる」

 それが、昨日のよっちゃん達ってことね。

「なんで?」
「ん?」
「なんで環境なの?」
「いろいろあるんだよ。このカメラが環境専門ってだけだ」
「じゃあ、他にもいるの?」
「さぁな。俺の話はこれで終わり。誰にも言うなよ?」
「うん。言わないよ。堀田くんが超能力者なんてバレたら大変だもんね」

 名前も知らなかったくせに、私も現金だな。

「だから、よかったら付き合ってください!」
「はぁ?」

recollection ――彼の言い訳――

 返事は今じゃなくていいから。
 薄暗い部室を選んでよかった。耳まで真っ赤になったのは、絶対に見られたくない。

「……いいのか、コレ……」

 でも元々、この部屋を選んだのは笑ってしまうのを隠すためだった。
 写真に人を閉じ込められるなんてこと、あるわけない。
 昨日の奴らはフラッシュで鴨川の目が眩んでいる間に走って逃げただけのことで、「消えた」と言って鴨川が目を輝かせているのが、妙に面白かった。だから、少しからかってやるつもりで、そうだと言ってやった。

「……はぁ」

 なかなか可愛いじゃねぇか、ちくしょう。鴨川が写真を撮れば人が消えると信じるならば、それでもいいのかもしれない。
 付き合うかどうかは別問題としても、嘘はつき続けてやろうじゃないか。

命を写真に収める地球に優しいクラスメイト――了
お題元:水性アポロ

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