永遠少年症候群

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ココにあるもの

 卒業式は、入学式と同じようにホールに並んで行われた。危険な魔法の使用や魔力の低下で入学式の5分の4程度にまで人数は減ってしまったけれど。

「……みなさん。7年間、よく学び、よく成長しましたね」

 姿の変わらない校長先生が、少しだけ口元を綻ばせて言う。
 校長先生が一人一人の顔をじーっと眺めながら滔々と話している。
 あぁ、確かに声が上ずってるなぁ。だって校長先生は、ほとんど接触なんかなかったけれど、ずーっと私達を見守ってくれてたんだものね。

「魔法使いは毎年1000人ほど生まれますが、エヴァンジェリン魔法学校を卒業できるのは毎年40名にも満たない……。あなた達は、魔法使いの中の、魔法使いです。そうあってください」

 校長先生が話し終えると、卒業式は簡単に終わった。
 クライヴは、来なかった。日本から、お父さんが会いにきてくれた。

「ココ……、無事卒業したようだな」
「はい。お話しした通り、私こっちで……」
「あぁ、伝えに来たのはそれじゃない。親父が死んだ。俺は間藤家を継ぐ気はない。今日からお前が当主だから、よろしくな」
「ちょっと、お父さん。待って……、わ、私、侯爵夫人に……っ」
「何を言ってる。あっちの親御さんとは話がついてるから、彼には婿養子になってもらう」
「か……、勝手すぎるわ!」
「……」

 ぐしゃっと、初めて、お父さんから頭を撫でられた。
 頭を撫でる。感情を手に入れて初めて知った、愛情表現の形。

「お前が怒っているのを見るのは、初めてだな……。親父のせいで……いや、親父を止めなかった俺のせいで、すまないことをした」
「……、でも」
「クライヴから連絡があった。まだ生きてるらしいから、早く捕まえてくれ」
「……はい」

 間藤家の、当主か。

「日本に帰らなくてもいいの?」
「どっちでもいい」
「どっちでもいいって……」
「どこでもドアできるんだろ? すぐに帰ってこれるなら、いいじゃないか」
「うっ……」

 どこでもドアが通じるわ……! 嬉しい……。

「どうした」
「いえ……、研究の先進地にはいたいから、こっちに住みますが……たまには、帰ります」
「そうしろ」

 別れ際、お父さんはもう一度私の頭を撫でた。

「俺的にはクライヴもいい年だから、あいつにやったつもりなんだが、まぁ……なんだ。よかったな」
「娘をモノみたいに言わないでください」

 煮ても焼いてもいいってほんとにそういう意味だったの?
 我が父ながら、本当に理解できない。
 娘を失うのが怖くない、か。まぁ、じゃなきゃ吸血鬼と付き合うのなんて普通反対するわよね。

「……それじゃあな」
「お、お母さんは、元気ですか」
「あぁ……。まぁ、元気な方だ」

 希。のぞみさん。絶望して絶望して、絶望する母。あの人を恐れないのは、確かに恐れが欠落した父だけなのだろう。
 普通だと思ってたけど、今は母が怖い。でも家族だから。

「……ココも元気ですって、伝えてください」
「わかった。じゃあな」

 父が去ると、ヴォルターがやってきた。

「卒業おめでとう、ココ」
「あなたも」
「さっき親父から聞いたんだけど、オレ、婿養子だって?」
「……そうらしいわね」
「結婚することになって、いいのかい?」
「私は、侯爵夫人になるつもりだったけど……。どっちでも一緒よ。あなたがいればいいんだから」
「……人間社会に入るなら、働かなきゃなぁ」

 悩んでるわ。ボンボンだものね。
 いざとなったら研究の助手として雇ってあげよう……。
 マーリー、アンブラ、チェルソ、マティアスにそれぞれ挨拶して、最後にエミィを捕まえた。

「エミィ、卒業おめでとう!」
「ありがとう。ココもおめでとう」
「エミィも旅なのね……。いつでも寄ってね」
「えぇ。そうするわ。ヴォルターと仲良くね」

 ぎゅーっとエミィに抱きつくと、エミィもハグしてくれた。7年間、時々けんかもしたけど、いっつもこうだった。
 私の初めての友達だ。

「……ドロテアが見つかっても、サクラーティが見つかっても……。ずっと友達よ。約束よ」
「えぇ。ありがとう」

 感情を、手に入れた。魔法、友達、恋人。全部手に入れた気がする。
 最高の学校生活だった。これは、まぎれもない事実なのだ。