永遠少年症候群

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    アルファクラスへ

     4年生で一番の目玉は、なんといっても1年かけて勉強するドロテア・チェスティの半生。4年生の授業でドロテアの名前が出ないのはスポーツの授業くらいだ。
     魔法史だけでなく魔法理論にも、魔女なのに世界史にまで名前が出てくる。
     完全無欠の魔女。……っていうのは、なんだか主観が入りすぎてる気がするのだけれど。
     そんなドロテアづくしの4年生が終わる頃、私は校長先生に呼びだされて入学式以来2度目の校長室を訪ねた。

    「校長先生、ココ・ブレナンです」
    「どうぞ」

     相変わらず消えそうな声で、開いたドアの奥には水晶玉を拭き上げる校長先生がいた。前回見た時とほぼ同じ姿だ。魔女も年を取るのは遅いけれど、それでも少しずつ老けるものなのに。本当に、何百年も生きている魔女なのだろうか。

    「5年生からアルファクラスに行きませんか?」
    「はい?」
    「アクファクラスの子が、一人魔力が尽きてしまったのです」
    「……エミィに聞きました」

     セフェリノの顔がチラつく。校長先生は、はぁ……と小さくため息をついた。

    「また、です。こんなこと滅多になかったのですが……。それに、たまに起こることとはいえアルファクラスの子は初めて……。すみません、生徒に聞かせる話ではありませんね」

     エミィが言ってた。『また』、エドワールと仲の良かった子だったのだと。

    「先生……私、エドワールは魔力の体質的に……周りから奪うんじゃないかと思うんです。昔、魔力の回復のタイプについて書いてある本を読んだことがあります。その中に、奪うっていうのがありました。私、呪いの代償のことかと思ったけど、そういうタイプがあるのかも……。それに、エドワールと話した後、ベッドに上がれないくらい魔力が減ってたことがあって」
    「……そうですか……」

     一気にまくし立てた後で言ってはいけないことを言ってしまったような気がして、気を紛らわせようと部屋を見渡す。大きな水晶玉には地球儀のような球体がくるくる回っていた。たまにそれがズームアップされると、見たこともない文字が書かれていた。
     じーっと見ていると、校長先生が水晶玉を磨くのを再開した。

    「それは、こちらでなんとかします。あなたは、クラスを移るかどうかを考えてください。まだ《魅惑》と同じクラスがいいですか?」
    「どちらでもいいです」
    「ではアルファクラスへ行きなさい。レベルが高い方に合わせたほうがあなたも勉強になるでしょう」
    「はい」
    「それと。……あなた、卒業後はどうするのですか? 名前は返してもらうつもり? 日本に帰るつもり?」
    「えっと……特に、何も……」
    「あっという間に卒業ですよ。きちんと考えておかないと。私は……あなたには研究職が向いていると思います。参考までにね」

     今日の校長先生、よくしゃべるなぁ。というか、やっぱり私の名前を奪われていること、知ってるのね。

    「……その水晶は、先生の研究ですか?」
    「いいえ、私の師匠のものですよ。さぁ、どうぞ」

     先生が手元のスイッチを押すと、ドアが開いた。校長先生が魔法を使えないっていうの、本当なんだ……。

    「先生、私、一応……名前を返してほしいとは思ってません。感情がないのって図太く生きるには楽だけど、全然楽しくない」
    「そう」

     先生はそっけなく言って手元の水晶玉を見ていたけれど、口元は笑っていたように思う。
     教室に帰ると、アンブラ達が集まってきた。

    『なんだったの?』
    「……私、5年生からアルファクラスに行くことになったの」
    「…………レスリーが抜けた穴を埋めるのね……」

     そう、エドワールと仲良くしていて魔力がなくなった子というのは、マーリーのルームメイトのレスリーのことだった。レスリーが授業中に倒れたというニュースはすぐにエミィによってマーリーに伝えられ、私達に伝わることとなった。

    『アルファクラスには魔法で人を傷付けて退学になった子が二人くらいいるわよね。他にも移動する子、いるのかしら』
    「ココは元々アルファクラスでも上から数えた方が早いくらいの魔力だからレベルを合わせるためじゃないか?」
    「えっ!? そうなの?」
    「そうらしいわね。でも、パパが奪った名前の魔力のせいよ」
    「部屋割りって、アルファクラスとベータクラスで構成されてるじゃない。エミィと違う部屋になっちゃうのかな」
    「その時は私の部屋でいいじゃん」
    「あ、それなら……いっか。マーリーならエミィと一緒でも平気よね。私もできればマーリーかアンブラがいいけど……」

     誰とでも話せるけれど、生活するのはちょっと抵抗があるもの。
     私の心配は杞憂に終わった。ユーインさん曰く、面倒だから部屋の変更はしないらしい。
     5年生のクラスでは、初めて体験する派閥というものがあった。アルファクラスの初日、ツンと澄ました女の子が後ろに何人かの女の子を引き連れて私の前に立ちふさがった。

    「初めまして、ココ・ブレナン」
    「こ、こんにちは」

     なんだか怖くて、へらりと笑って教室を移動しようとすると、ぐいっと手首を掴まれた。

    「注意してあげる。このクラス、悪魔がいるの。ベータクラスにいたあなたは知らないかもしれないけど、キケンなやつなのよ」
    「……」

     ここで言い返したら、エミィの立場が悪くなるかしら。どうしよう、何が正解なのかしら。
     エミィは何も聞こえません、というようにスタスタ歩いている。なんでそんなことできるのよ。私、耐えられないわ。

    「でも、話してみなきゃ危険かどうかなんてわからないわ。それに、……注意してあげる。アルファクラスにいたあなた達は知らないかもしれないけど、私エミィのルームメイトなのよ。それ以上バカな事言ってみなさい。ただじゃおかないわよ」
    「な……何よ! アジアンがエラそうに!」
    「私達に勝てると思ってるの?」
    「少なくとも、あなた達よりも魔力は多いもの。魔法だったら勝てるわ。ふふっ、力だったら勝てないわね。あなた達体重がちょっと重そうだもの」

     その瞬間、エミィがぶーっと噴き出した。口元を抑えながら振り返る。

    「ココ、やめてちょうだい」
    「だって!」
    「うるさいよ、君達」

     マティアスが私の腕を掴んだ。

    「これ以上僕の友達を侮辱したら噛みつくよ」
    「あら、あなたが助けてくれるなんて」
    「君は問題を起こさずにはいられないのか」

     マティアスが女の子達をチラッとみると、彼女達は青くなって散り散りに去って行った。

    「あぁもう、私のアルファクラスデビューって最悪よ」

     ランチタイムにベータクラスへ行くと、マーリーは笑いながら聞いたと言った。ヴォルターとチェルソは苦笑している。

    「さっそくケンカ吹っかけたんでしょ」
    「あっちが悪いのよ」
    「おかげで4年間透明人間のふりしてたアタシの努力がパァよ」
    「僕だって」
    「私も悪魔か吸血鬼だって噂が出ちゃってるわ……」
    『気にしなくていいじゃない』
    「うん、まあ。そうなんだけど」
    「だけど、あんまりケンカしたらいけない。今後大げさになって、何かあるといけないよ」
    「ヴォルターはココに対して過保護だわ」
    「きっとブレナン先生よりよっぽど過保護だよ」

     ランチはいつも、意味のない話ばかり。
     でも今日は、なんだか引っかかった。過保護なのは私に対してだけじゃないはずよ。

    「もやもやするわ……」
    「胃もたれ?」
    「違うわ……」
    「生理?」
    「違う……。はぁ……、なんか、ヴォルターに会いたい」
    「あ」

     エミィが、ルームウェアに着替えつつニヤニヤ笑ってる。ハーブティーが目の前に現れて、座るように促された。それでもまだエミィは少し気持ち悪い笑みを浮かべている。

    「な、何よ……」
    「ヴォルターに会いたいの? なんで?」
    「なんでって、なんでだろう……。私、ヴォルターの背中を背もたれにして本を読むのがお気に入りなの。とっても落ち着くのよ」
    「ふーん。ヴォルターって、ほんと基本的にはココに甘いのよね」
    「マティアス以外の最初の友達だもの。私だって、エミィが最初の友達だから友達の中でもトクベツよ」
    「アタシも、ココのこと大好きよ」
    「うん」

     ハーブティーに口を付けて、ふと気づく。さっき、クライヴがコーヒーを出すみたいにエミィはこれを出した……。
     つい1週間前まで、注いで目の前に置いてくれてたのに。

    「エミィ、……次元変異マスターしたのね」
    「あら、気付いた? ココみたいにうまくできなかったからちょっと練習したわ」
    「すごいわ。作る時間の削除、それに、二つのものを距離削除で運ぶんだもの。私ができるのよりずっと難しいわ」
    「そんなに褒めても何も出ないわよ」

     エミィが、素直に嬉しそうな笑みを浮かべる。それにしてもさっきのニヤニヤ笑いは何だったのかしら。
     大きなビーズクッションに体を預けて、そのままぐーっと背筋を伸ばすためにのけ反る。

    「……エミィって、卒業後は本格的にドロテア探しをするのよね」
    「えぇ。どうかしたの?」
    「そういえば校長先生に進路のこと聞かれたときに何も答えられなかったなぁって思って」

     身長は伸びたし、ようやくエミィと目の高さが合うようになってきた。まだまだ、精神的には追いつけそうにないけれど、それでも私もちょっとは大人になってきてる。
     卒業後のことも見据え始めなきゃいけないのだ。

    「今のところ、名前を返してもらうつもりはないんだけどね。その他のことは、全然」
    「アタシは目的があって入学したんだもの。他の子は大体入学が目的でしょ。そんなものじゃないかしらねぇ……」
    「そっかぁ……」

     気にしなくていいかなぁ。
     翌日、私はヴォルターと図書室に行くことにした。例の背もたれをしてもらおうと思って。

    「私、ドロテアの創世論読むわ」
    「そう。じゃあオレも」

     背もたれのない大きなスツールに二人で背中合わせに座って、真っ直ぐ背筋を伸ばして座るヴォルターに寄りかかるという寸法だ。
     でも今日は、ヴォルターも少しだけこちらに体重をかけてきた。同じ力で押し合って自立するという物理っぽい考え方を取り入れたようだった。

    「ふふふ」
    「何?」

     なんだかヴォルターの声が近い。自分の心臓の音とヴォルターの心臓の音が混ざって聞こえるような気がした。

    「落ち着くわ」
    「そう」
    「俺もまぜてー」
    「いいわよ。ヴォルターの背中、半分貸してあげる」

     チェルソが私のいたところに座って、私はヴォルターに袖を引かれて肩に寄りかかることにした。これはこれでいいかもしれない。と思っていると、ヴォルターが本をめくるために腕をあげて私の頭の上に腕を置いた。その腕はしばらくすると、ぐるっと首の前を通っていった。
     無意識に効率的な体勢を模索していって、どうせ制服はスカートじゃないしあぐらをかいていた。だから、怒った顔で近づいてきたクライヴを見た時、あぐらをかいて行儀が悪いから怒っているのだと思った。

    「……パパ。どうしたの」
    「おい! うちの娘に何してるんだい!?」
    「あ、すいません。首締まってた?」
    「いいえ、大丈夫よ」
    「……そういう問題じゃないんだよ……」

     クライヴが頭を抱える。

    「今、抱き締めてただろ」
    「バカなこと言わないで。ただ寄りかかってただけなのにそんな変な想像するなんて、パパ気持ち悪い……」
    「気持ち悪い……!?」
    「ココ、先生は君のことを心配してるんだよ。確かにオレがベタベタくっつきすぎだったのかも。ココってそういえば女の子だったね」
    「ちょっと待って! 私はずっと女の子よ!」
    「……チェルソ、ちょっと」

     そこで、クライヴがなぜかチェルソを呼んだ。二人でひそひそ話して、私達は解放された。

    「もういいよ」
    「結局、パパは何しに来たのよ」
    「あ、忘れてた。大変なんだ」

     クライヴが思い出したように慌ててヴォルターに向き直った。

    「純血種って、灰になっても生き返るんだよな!?」
    「え?」
    「生き返るの!?」
    「血をかければ……。まさか」
    「マティアス・レオンハルトが日光を浴びたんだ。君も来てくれ」

     クライヴについていくと、寮のエントランスを数歩出たところで取り乱した様子のウォーリック先生が、灰をかき集めていた。ヴォルターも影からは出れないから、エントランスの出入り口で立ち止まる。

    「これがマティアスってこと?」
    「そう」
    「何があったの?」
    「わからない……」
    「オレの血をかけよう。他の魔力をもった血が混ざるのって良くない……かも。あぁ、ココ、ウォーリック先生を保健室に連れていってくれないか? 部屋は……ユーインの部屋を借りよう。チェルソ、オレあっちに行けないから灰を一掴み持って来てくれないか」
    「先生、行きましょう?」
    「そ、そうですね……」

     ウォーリック先生の手を引いて保健室にいくと、先生はびっくりして出迎えてくれた。

    「どうしたの、ミス・ウォーリック。ひどい顔色ね」
    「ちょっと体調がよくないみたいで」
    「ありがとう。あとは任せて。しっかりして、ミス・ウォーリック」

     先生を任せて、ユーインさんが使っているエントランス横の部屋に行くと、既にマティアスは復活していて、制服のジャケットを着こんでいる途中だった。

    「マティアス!」
    「ココ……。心配かけたね」
    「体調はどうなの?」
    「頭が痛いよ」
    「あなたも保健室に行った方がいいわ。ウォーリック先生もきっと心配してるし」
    「何があったんだ? マティアス」
    「……何でもないさ」

     何でもないわけ、ない。

    「誰をかばってるの?」
    「さぁ。誰だろうね」

     どうやら、教えるつもりはないらしい。
     保健室にマティアスを押し込むと、ウォーリック先生はマティアスにハグしてわんわん泣いた。泣きながら言っていたことを総合するに、ウォーリック先生はマティアスが灰になって崩れ落ちるところを目撃してしまって大層なショックを受けたらしい。

    「先生、もう大丈夫ですから……」
    「ほんとに、本当に良かったぁ……!」
    「……参ったな……」

     滅多に動じないマティアスが困りきった顔をしていたけれど、誰も先生を引きはがそうとはしなかった。ウォーリック先生が取り乱すことは、もっと滅多にないことだから。

    「……もう行っていいですよ」

     散々泣いたあとで鼻をかみながらウォーリック先生があっさり言うと、マティアスは疲れた様子でさっさと戻っていった。

    「あ、ココ」
    「何です?」
    「……どうせ知ることになることですから、言っておきます。マティアスを外に突き飛ばしたのは、あなたと言い合いをしていた女子です」

     この前、私をかばったから? だから、一度殺されたの?
     じゃあマティアスがさっき庇ってたのは、私?

    「彼女たちは復活するとはいえ相手の命を脅かすような危険なことをしたので、退学でしょうね」
    「私のせいで……」
    「違います。そういう誤解をしないために、今伝えたんですよ。悪いのは彼女です。ただ……誰にでも正論を振りかざして敵を作るのは得策ではありませんよ」
    「はい……」

     それならあの時、何て言えばよかったのかしら。
     正論を言えばいいわけではない。それは、そうかもしれない。でも。

    2015/04/14公開