永遠少年症候群

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ギグル

 神様なんていないと思うのはこんなときだ。
 会社はクビになったし、彼女にもフラれた。婚約指輪を買おうとしていた矢先だった。指輪のために貯めていた金はあるからしばらくは失業保険金と合わせればどうにかなりそうだけど、あんまりだ。
 少しでも安い店がいいとケチな考えが浮かんで、いつもの店よりも繁華街寄りにある安い居酒屋へとふらふら歩く。

「!」

 どんっと横からの衝撃に車道側へふらつく。

「あ、サーセン」

 へらへらと笑う大学生らしき男に、小さく頭を下げてまた歩き出す。

「ヨシオ、何してんだよー」
「えー? あんな社会人にはなりたくねーなー」

 俺のことじゃないかもしれない。でも、俺のことかもしれない。
 ドッと笑う大学生を横目に、家へと方向転換した。
 俺だってあいつらくらいの頃は、もっと楽しかったし、こんな踏んだり蹴ったりな状況になるなんて考えもしなかった。

「あー……」

 消えたい。なんでこうなったんだろうな。

「あー!」

 うるさいな。何なんだ。

「そこ俺んちなんだけど!!」

 また隣の酔っ払いが間違えてんのかな。そう思いつつ鍵を差し込む。

「すんません、部屋間違ってますよ」

 肩を掴まれて、初めて俺に言っているのだとわかった。部屋の番号は202。間違いない。
 ガチャン、と鍵が開く音がした。

「いや、ここ俺んち」

 学生の頃から、ずっとだ。

「えっ!?」

 声の主を見ると、先程ぶつかってきた大学生のような、いくらでもそこらへんを歩いていそうな冴えない大学生風の--……。

「えっ!?」

 冴えない大学生代表のような、俺そっくりの奴だった。首筋のホクロまで同じところにある。

「なんっ、え? 俺!?」

 とりあえず部屋に入ると、ほっとするようななつかしい家具が俺を出迎えた。うん、社会人になって捨てたのもある。本当に懐かしい。

「って、えー!!!!」
「うるせぇぞ!」
「すいません!」

 壁をドンッと殴られる。そうそう、学生の頃はよくこれされたわ。

「……君、名前は」
「……」
「学生証持ってるか? 俺、免許証出すから」

 答え合わせのように免許証を突き出すと、同じように突き出された学生証には同じ名前と生年月日が並んでいた。

「俺、過去に来たのかな」
「そ、そんな、マンガみたいなこと」

 あ、この時代からやり直すのも、いいかも。

「うん、それもいいな」
「何が」
「別に。帰りたくないなって」
「……あっさりすぎるだろ。俺はまだ、混乱してる」
「俺はしなーい。会社クビになって、婚約しようとした彼女にフラれて、過去にくるなんて、もう、今日一日朝から混乱して疲れましたー。……財布は持ってるから、どうにでもなる。すぐに出てくから、寝ていいか」
「……どうぞ」

 過去の俺は、バタバタと布団を敷いてくれた。しかし、なんだかんだと家事につき合わされ、並んで寝る。

「……そんなに、毎日楽しくないことになんの?」
「おー。悲惨だぞ。世界的に有名な企業は潰れるし、……日本ヤバくなるし」
「家族は?」
「みんな元気」

 お袋も親父も、年々しぼんでいくように小さくなっていっているけれど。

「夢、叶わないのかー……」

 ぼやくような声を聞いた瞬間、胸にこみ上げてくるものがあった。

「叶わない。でも、続けてる」

 ずっとずっと。

「捨てようとしたんだ。でも、余計苦しかった」
「じゃあ、まだ、どん底で死ぬ寸前ってわけでもないんだな」
「そうだ。それに、夢が叶うかどうかなんて、死ぬ時にしかわかんねぇよ」
「そっか。最後に笑えりゃ充分か」

 まるで、自分に言い聞かせたみたいだった。
 それからさすがに限界がきて寝落ちたが、起きてみると、大学生の俺はいなかった。ついでに、少し前に壊れた炊飯器もない。家事は済んでなかった。
 夢だったのだろうか。
 部屋の片隅にある、小説の構想ノートを手に取った。しばらく触ってないそれは、ひんやりとしていた。

「夢が叶うかどうかなんて、死ぬ時にしかわかんねぇ、よな」

LUNKHEADのギグルを聞きながら、そのイメージを書きました。
最後に俺達笑おうぜっていう最後の歌詞の後にジャジャジャジャンって曲が終わるのがすごく好きです。
この掌編小説は、著作権を放棄します。